導入事例

横浜市立大学附属市民総合医療センター様 [血管撮影領域における統合型医療情報システムの構築]
放射線被ばく線量管理の取り組みと活用

横浜市立大学附属市民総合医療センター様

横浜市立大学附属市民総合医療センター(以下、当センター)では、動画ネットワークシステムとしてフォトロン メディカル イメージング株式会社(以下、フォトロン社)の「Kadaシステム」を導入している。今回、主に紹介する放射線被ばく線量管理レポートは「Kada-Report」のオプション機能で、当センターに設置されている2社4台の血管撮影装置とオンラインで接続し、患者被ばくデータを一元管理している。当センターでは、放射線被ばく線量管理レポートを活用して各装置から出力されるRDSRファイルを基に線量情報を取得することで、DRLs2025に準拠した管理も行っている。本稿では、当センターにおける動画ネットワークシステムの構成をはじめ、放射線被ばく線量管理レポートを用いた線量管理の取り組みと臨床現場における活用法について概説する。

※横浜市立大学附属市民総合医療センター 放射線部 塩入知子様 櫻田尚武様に執筆いただきました。月刊新医療2026年3月号からの転載文

導入製品

はじめに(図1)

当センターは、横浜市で唯一の高度救命救急センターと横浜市重症外傷センターを擁し、“地域医療最後の砦”として高度先進医療を提供する大学病院である。病床数は655床(本館608床、救急棟47床)と、横浜市最大規模を有し、神奈川県災害医療拠点病院の1つに指定されている。
当センターの特長としては、内科・外科など複数の診療科が一体となってチーム医療を提供する10の「疾患別センター」と、25の「専門診療科」から構成されており、TAVI(経カテーテル的大動脈弁留置術)やTEER(経皮的僧帽弁接合不全修復術)などの心疾患に対する低侵襲治療をはじめ、重症呼吸不全や院外心停止などに対するECMO(体外式膜型人工肺)を用いた治療を先駆的に実施している。
そのため、他施設が対応できない重症症例を積極的に受け入れることが可能であり、外科対応も含めて365日24時間体制にてチームで質の高い診療に当たっている。
血管撮影装置は、本館にハイブリッド手術室を含めて3台、救急棟に1台の計4台を備えている。当センターでは、動画ネットワークシステムの更新を機に、血管撮影室のワークフローの改善や職種間連携を検討し、院内医療情報システムと統合することで課題を解決できるようなシステム設計を行った。

横浜市立大学附属市民総合医療センター外観
図1 当センター外観

動画ネットワークシステム導入のコンセプト

当センターでは2015年3月、血管撮影装置の更新に合わせて、フォトロン社の動画ネットワークシステムを導入した。その後、2021年3月のシステム更新時には、横浜市立大学附属病院においても同社の動画ネットワークシステムが採用され、両附属病院間での運用統一及び将来的な連携を見据えて同一のシステム構成とした。一般的に、院内医療情報システムは、電子カルテを中心に、各部門システムや医用画像管理システム、動画サーバなどの画像情報システムが連携している。
当センターでは、メディカルスタッフが医療情報システムを用いて、翌日検査予定患者の現病歴や薬剤等禁忌情報、検査歴などの情報収集を行い、検査内容の把握や患者ケアに役立てている。しかし、患者ごとに電子カルテや各部門システムを閲覧して情報収集する運用は、膨大な労力と時間を費やしていた。そこで、動画ネットワークシステムの更新の際、レポートシステムに、検査に必要な患者情報を短時間で容易に取り込む機能を構築し、情報の一元管理を行う仕組みとした。
レポートシステムに情報を集約するメリットは、
1.全ての職種が使用するレポートをオーダ情報と関連付けてワンクリックで作成できる
2.電子カルテ上の患者基本情報、造影剤禁忌、アレルギー、感染症、現病歴、検査歴などを自動取得できる
3.取得したデータは多職種の帳票作成や新規レポート作成に引用できる
4.医師が記載した検査・治療レポートの情報やその他の情報を電子カルテに反映・連携できる
5.医師および診療放射線技師のレポートシステムと放射線被ばく線量管理レポートを連携させることで、DRLs2025との比較・検証をはじめ、自施設のLocal DRLsの設定など患者の放射線被ばくを適切に把握・管理できる
などの点がある。

システムの構成と特長(図2)

●動画レポートサーバ「Kada-Serve」
「Kada-Serve」は、DICOM動画サーバ、Webサーバ及びレポートサーバを1台のサーバ筐体で運用するシステム設計が可能である。当センターでは、4台の血管撮影装置及び2台の透視装置と接続し、X線動画像を保存できるシステムとしている。また、大容量の記録媒体(50TB)を搭載しているため、血管内超音波(IVUS)や光干渉断層(OCT)のプルバック画像、心筋血流予備量比(FFR)の波形、心臓カテーテル検査時の心内圧波形なども保存可能である。そのほかに、レポートデータや血管撮影装置の透視録画像(透視像収録システム「Kada-Rec」を使用)まで保存できるシステムである。

●DICOM動画ビューワ「Kada-View」
「Kada-View」は、「Kada-Serve」に保存しているDICOM画像を読影するビューワである。クライアント端末は、血管撮影室、手術室、心臓血管センターの医局・カンファレンス室・病棟、病診連携室、医療情報システム担当などに合計12台設置している。電子カルテ端末で、Webベースの「Kada-View」で閲覧する際も全く同じ画面構成および操作性になっている。

●循環器レポートシステム「Kada-Report」
「Kada-Report」は、「FileMaker」をベースとしたレポートシステムである。レポートシステムでは、取り込まれた検査オーダ情報から検査予定表を自動で作成することができる。当センターでは、検査予定表から医師やメディカルスタッフごとにフォーマットされたワークシートを作成できる仕組みとしている。システムはカスタマイズ性が高く、ポリグラフの圧データの取得や心カテ・PCIレポート以外にも、EVT、不整脈に対するデバイス治療やアブレーションのレポートフォーマット作成及び看護記録、診療放射線技師用チェックシート、患者皮膚線量報告書の作成など現場のさまざまな要望に対応可能である。各レポートは、院内全ての電子カルテ端末にてWeb参照することが可能である。

●透視像収録システム「Kada-Rec」
「Kada-Rec」は、患者情報を取得した上で、カテーテル検査の透視像をX線照射と連動し、画像ファイルとして収録保存するシステムである。「Kada-Serve」と連携することで、院内へWeb配信できる。画像ファイルはMPEG4形式で保存されており、治療経過の振り返り、学会発表、教育用ビデオ作成など多目的に活用している。

●遠隔映像配信システム「Kada-Stream」
「Kada-Stream」は、アンギオ画像、血管撮影室映像、術野カメラ映像と血管撮影室で発生するさまざまな映像を遠隔地へ配信できるシステムである。ビデオ会議システムを活用し、血管撮影室内と遠隔地の医師、診療放射線技師とリアルタイムに映像の共有、チャット、会話のコミュニケーションを図ることができる。当センターは系列の大学病院と映像共有による安全、教育につなげる目的で導入した。

図2 当センターにおける動画ネットワークシステムの構成
図2 当センターにおける動画ネットワークシステムの構成

(システム構成補足)
動画レポートサーバと電子カルテのオーダ連携により、検査に必要な患者情報を簡便に取り込み、レポート連携を行う機能を構築している。当センターでは、各種レポートを電子カルテと連携させており、院内全ての電子カルテ端末から閲覧可能としている。

放射線被ばく線量管理レポートを用いた線量管理の取り組みと臨床現場への活用

●皮膚被ばく線量マップの作成と活用
放射線被ばく線量管理レポートでは、各装置から出力されたRDSRデータを用いて線量情報を取得している。RDSRデータは、透視線量と撮影線量のそれぞれが個別にDICOMタグに記録されているため、透視と撮影の線量比率が算出でき、透視だけの検査でもレポートが作成できる。
寝台の位置、撮影角度、SID、視野サイズなどの情報から具体的な被ばく位置と照射野の重なりがシェーマで表現可能であり、局所被ばく線量の推定値も算出できる。(図3)。
皮膚被ばく線量マップは、撮影された角度の単位を変えて表現することも可能(5度、10 度、15度、30度)である。これらの線量情報は電子カルテと連携させており、他のレポートと同様に院内全ての電子カルテ端末から閲覧可能としている。また、被ばく線量や透視時間などの数値データは、医師やメディカルスタッフが記載するレポートに自動的に反映される仕組みを構築することで、情報連携と共有を強化している。
当センターでは、血管撮影装置が表示する空気カーマが3Gyを超えた場合、高線量被ばく症例として医師や看護師に皮膚観察を依頼している。本システムが作成する皮膚被ばく線量マップは、照射位置や重なりを可視化し、電子カルテで参照できるため、病棟や外来時に皮膚観察を行う際に有用である。

図3-1 皮膚被ばく線量マップ(1)
図3-1 皮膚被ばく線量マップ(1)
図3-2 皮膚被ばく線量マップ(2)
図3-2 皮膚被ばく線量マップ(2)

(補足)
「Kada-Report」に取り込まれた寝台の位置情報やCアームの角度情報、撮影条件、入射線量情報から自動で皮膚被ばく線量マップを作成し、視覚的に局所被ばく線量と部位が分かるようになっている。

●症例検索機能を用いた線量データの抽出とDRLs2025との比較・検証
DRLを用いた線量管理では、DRLs2025でのDRL値と自施設の中央値で線量の比較を行っている。自施設の中央値は、本システムの症例検索機能を用いて簡単に算出することができる(図4)。
管理項目は、DRLs2025で定められた項目以外にも、対象血管、手技、使用デバイスごとに細分化した管理項目を当センター独自で設定している。集計期間は任意に設定可能で、前年同一期間との比較もワンクリックで実施できる。
また、AND/OR検索機能を用いた検査名による抽出や、看護記録との連携による使用デバイスごとでの抽出も可能である。抽出したデータは、集計フォームを用いることで任意期間の線量情報がエクセル出力及びグラフ表示可能であり、中央値や75%タイル値をはじめ、最大値や最小値、平均値などが数値データとして同じシートに表示される(図5)。
得られたデータは、高線量被ばく症例などの外れ値解析や装置間での比較を通じて、検査プロトコールの見直し、検査室運用の調整、スタッフ教育(被ばく防護)などの取り組みにも活用している。また、医師及び診療放射線技師のレポートシステムと連携しているため、患者体格、病変特性、手技内容、術者などのさまざまな要因を考慮した線量評価や取り組み前後での比較が容易である。

図4-1 症例検索機 能を用いた線量データ の抽出方法
図4-1 症例検索機 能を用いた線量データ の抽出方法
図4-2 放射線被ばく線量管理レポートから出力された集計データ(エクセル形式)
図4-2 放射線被ばく線量管理レポートから出力された集計データ(エクセル形式)

(補足)
集計は管理項目以外に、手技毎でのサブ解析をはじめ、術者や技師名、病変のAHA分類などの医師や技師のレポートに記載されている項目での解析が可能である。

図5 装置間におけるDRL値の比較例
図5 装置間におけるDRL値の比較例

(補足)
本館で行ったPCIと救急棟で行った緊急PCIの被ばく線量を比較すると、緊急症例の方が有意差をもって高くなった。緊急時は適切な被ばく低減が行えていない可能性を推測し、ライブズームや低線量撮影プログラムの使用を技師及び医師に周知した。
この取り組みの前後比較では、有意差を持って全体的に被ばく線量が下がり、体格のいい患者でも3Gy以下で抑えられるなど一定の効果を得た。

まとめ

フォトロン社の放射線被ばく線量管理レポートでは、装置メーカーに依存せず、統一した指標で放射線被ばく情報を管理できる点が大きな特徴である。これにより、患者の放射線被ばく線量を正確かつ一貫した基準で把握することが可能となる。一方で、現状では循環器内科向け動画ネットワークシステムの一部として提供されており、頭部血管造影や腹部血管造影へのシェーマ対応など、改善すべき課題も残されている。今後は、これらの領域にも対応できるよう製品の拡張と機能強化が進むことを期待している。

塩入知子(しおいり・ともこ)

82年東京都生まれ。06年北里大学医療衛生学部医療工学科診療放射線技術科学専攻卒業。同年より公立大学法人横浜市立大学附属市民総合医療センター 放射線部に入職し、現在に至る。11年に日本血管撮影・インターベンション専門診療放射線技師の認定を取得。
所属学会研究会:日本放射線技術学会、日本心血管インターベンション治療学会、循環器画像技術研究会、神奈川カテ室メディカルスタッフ研究会等。

横浜市立大学附属市民総合医療センター 放射線部 塩入知子
横浜市立大学附属市民総合医療センター 放射線部 塩入知子

 櫻田尚武(さくらだ・しょうぶ)

 

72年神奈川県生まれ。00年千葉大学医学部附属診療放射線技師学校卒業。同年より公立大学法人横浜市立大学附属市民総合医療センター 放射線部に入職し、現在に至る。13年に日本血管撮影・インターベンション専門診療放射線技師の認定を取得。
所属学会研究会:日本放射線技術学会、循環器画像技術研究会、神奈川カテ室メディカルスタッフ研究会等。

横浜市立大学附属市民総合医療センター 放射線部 櫻田尚武
横浜市立大学附属市民総合医療センター 放射線部 櫻田尚武

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